ダイス
未解決捜査班の部屋へ入ると、深水が机に突っ伏して眠っていた。
昨夜遅くまで事件の推察をしていたのだろうか、それとも他の理由で寝不足なのか。
紗江子は無邪気なふうに見える寝顔を眺めた。
昔もよくこんなふうにして机で寝ていた。
その時は必ず大きな事件が起きていて、深水はいつもそれに躍起になっていた。
今の彼からはそんな空気は微塵も感じない。
未解決捜査班へ行ってから、そんな情熱は失ったということだろうか。
「おはようございます」
蓮が元気が有り余ったような声で挨拶をしながら部屋に入ってきたので、紗江子は思わず、し、と人指し指を唇に当てた。
蓮の視界には直ぐに眠る深水の姿が入ったらしく、声を小さくし、改めておはようございます、と言った。
「昨夜、暑かったから眠れなかったんですかね?」
蓮は深水の寝顔を見ながら囁くような声で言った。
そうか、そういう見方もあるか。
夏場は必ず冷房をつけて寝る紗江子にはその考えはなかった。
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