ダイス
その言葉通り、彼は班員の前では明るく、何処か調子のいい男を演じている。
それは理解出来なくはない。
誰だって、本当の自分なんて隠して生活しているものだ。
「辻木班、大変ですよね」
蓮は歩いていく聡と笹木の後ろ姿を見ながら言った。
彼らの班から殺人犯が出た。
一体、それはどんな気分なのだろう。
主任、という立場を拒否し続けている紗江子には分からない感情だ。
「さ、行くわよ」
紗江子は余計な考えを振り払って、蓮の背を叩いた。
すると蓮は、はい、と威勢のいい返事をして紗江子と共に歩き出した。
警視庁。
憧れではなかった。
必ず来ると決めていた場所。
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