ダイス



「……殺人事件、起きてるかって」


雪音は聞き取れないような小さな声で言った。


こどもの笑い声が耳に届く。


彼らにとって、この世は眩しい色で塗られているのだろう。


自分も幼い頃はそうだった。


太陽は赤だけじゃないし、大空も青だけじゃない。


雲も白だけじゃないし、葉っぱも緑だけじゃない。


でも、今は違った。


全てが色をなくしていた。


赤も青も、白も緑もない。


モノクロとも違う。



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