ダイス



どうせ区役所職員や教師などのイメージをしているのだろう。


公務員、と言われて警察官を思い浮かべる者は少ないはずだ。


「北見さんは? お仕事」


紗江子はストローを吸う明良に質問を返した。


「俺? フリーター。いい年してあれなんだけどね」


明良は答えてから苦笑いをしてみせた。


目尻が少し上がる笑顔。


「そうなの」


いい年してフリーター、などとは思わない。


世間が不景気だということもあるが、働いているなら雇用形態など関係ないというのが紗江子の考え方だった。


「夕飯、食べました?」


明良は突然、そう質問してきた。


今の流れで食事の有無の質問をするのはおかしい。


「え?」


紗江子は小首を傾げ、明良を見た。


すると明良は紗江子から視線を外し、もう一度口を開いた。


「いや、まだだったら一緒にどうかな、と思って」


自分達の関係は顔見知り程度にも達していないと思う。



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