ダイス



「えーと、出来れば、一緒に飯食いたいな、と思って……」


紗江子の怪訝な表情に気付いたのか、明良は声を小さくして言った。


さして知り合いでもない男に食事に誘われることは少なくはない。


でもこんなふうに照れたように誘ってくる男は少ない。


誰も、自分に自信たっぷり、といった様子で誘ってくるのだ。


断られるはずなどないと決め付けたような態度で。


一度そのプライドをへし折ってやれば、誰も彼も二度と紗江子を食事に誘うことはしないのだ。


「いいわよ」


紗江子は笑みを見せずに明良の誘いに乗った。


理由は一言で言えば、新鮮だったから。


周りにはいないタイプなのでつい面白いと感じてしまったのだろう。




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