ダイス
深水和哉は深く煙を吸い込んだ。
「まず……」
そして顔をしかめる。
「えぇ。海外産て味、違うんですか?」
目の前でははっきりとした瞳の女が不服そうな顔をした。
海外産、といってもパッケージに書かれているのは韓国語だ。
「韓国行ったのか?」
深水はもう一口吸ってから訊いた。
すると、神沢絋奈は首を横に振った。
「何処にそんな暇があるんですか。こっちとあっち、行ったり来たりしてたんですよ。それ、笹木さんから貰ったんです。友達から貰ったんだけど、不味いからいらないって」
ふざけるな、あのガキ。
深水はそう思いながらも、結局煙草を短くなるまで吸った。
「じゃ、今までお世話になりました」
絋奈はぴし、と敬礼をしながらもにこやかな顔で言った。
若いな、と思いながらその顔を見る。
その若さは羨ましくもあり、何処か憎らしくもある。
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