ダイス
過去と向き合うなど弱い人間のすることなのに。
――――ねえ、あのワンピース、貸して欲しい。
柔らかい笑顔で言われた。
お気に入りだし、高かった。
でもその笑顔には断れなかった。
だから、あの薄いブルーのフレアーなワンピースを貸してあげた。
喜んでいた。
そして、自分と似ているのに、自分より似合ったていた。
可愛かった。
もう、いっそあげてしまおうかと思う程に。
でも似合うと言われたからそれはやめておいた。
「浅川さん?」
その言葉に紗江子は意識を戻した。
紘奈の話を聞くなり、意識が過去へと引き摺られたのだ。
「え? ああ、うん」
紗江子は大袈裟に口角を上げてみせた。
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