冷たいアナタの愛し方
階段を上りきると、円形のコロシアムは満員の人々で埋め尽くされていた。

そして彼らが一心に見つめている先には――


「きゃ…っ!?あれって…巨人!?」


「今日のカードはコロシアムの主が相手か…。これは勝てないね」


コロシアム中央には闘技場があり、そこには腰に粗末なぼろきれを巻いた緑色の肌の巨人が立っていた。

右手には当たれば人など簡単に引き飛びそうな巨大な棍棒を持ち、目を凝らすとあちこちに血がこびりついている。

そして対するのは巨人の足元に居る小さな小さな人間。


「巨人と人が…戦ってるの!?」


「奴隷か、どこかの国の名のある戦士を捕らえて連れて来たか…。名声が欲しい連中は自らここに乗り込んで来るけど、あの様子だとそうじゃないみたいだね」


…やけにあっさりとした説明だ。

この国で生まれ育ったのだからこの環境は自然かもしれないが、オリビアの目にはとても異質な光景として捉えられている。

そして目を離したその隙にどっと歓声が沸き、闘技場に目を遣ろうとしたオリビアの両目を片手で塞いだのは――ルーサーではなく、ジェラールだった。


「そっちを見るな。こっちに来い」


「あの人…どうなったの!?」


「知らなくていい。だからこんな所連れて来たくなかったんだ」


舌打ちをしながらオリビアの肩を片手でぐっと強く抱き、もう片方は目を塞いだままで最上級の特別席に早足で歩くジェラールとルーサー、そして…オリビア。


熱狂していた観客たちは、この国の王子たちの顔をよく知っている。

戦場に出る度に功績を挙げて、それを嬉しがりもせずに凱旋してくるクールな姿に男女関係なく憧れを抱いている者も多い故に、彼らが連れてきた女性が一体何者なのか…場内は違う意味で騒然とし始めた。


「ちょっと!目隠しされてたら転ぶじゃないの!」


「だから支えてやってるんだろうが。つべこべ言わず黙ってろ」


向かう先には、他の特別席とは格別された王族専用の席。

丸々と太った酒樽と直談判をすべく、ジェラールが動く。
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