冷たいアナタの愛し方
ウェルシュの瞳も青いが、ジェラールのそれとはまったく違う。

ジェラールの瞳は真っ青でいて深く澄んだ色をしているが、ウェルシュの瞳は昏く濁っていてとても綺麗とは言い難い。

しかも末弟に詰め寄られて剣の柄に手を伸ばしている姿は滑稽の何物でもなく、さらに言えばこんな状況にも関わらず、こちらをちらちら見ていることが気持ち悪い。


「本当に君のことが好きっぽいね」


「き、気持ち悪いこと言わないで!私は普通に結婚したいの。優しくて思いやりがあっていつも傍に居てくれる人と…」


頭に思い描いたのはルーサーの姿。

だがそれを本人に言えるはずもなく、背中で庇ってくれているルーサーのシャツを握って離さない――今はそれ位しかアピールできない。

この人は生粋の王子様。

一応自分もお嬢様だけれど養女だし、身分も釣り合わなければきっと自分のことなんて眼中にもないだろう。


「話の続きをする。お前が父上と母上を殺したんだな?」


「な、何を根拠に……」


「腰巾着に寝込みを襲わせて、お前自身の手を汚さなかった。血糊のついた剣を持った黒づくめの男が離宮と城を隔てている扉から飛び出て来たという証言がある。…父上たちはお前に王位を継がせる気がなかった」


「うるさい!俺は長男だし帝王学を受けて育ったんだ!お前らとは別格の男だぞ!」


「父上は常々才のある者に継がせると言っていた。お前はお前自身が当てはまると思っているのか?」


蔑視したジェラールの瞳を受けて憤慨したウェルシュは、鞘から剣を抜くとやみくもに振り回しながら前進してきた。


「俺が王になる器だ!お前らは国から追い出して二度と戻って来れないようにしてやる!それともここで殺されたいか!?」


闘技場から大きな歓声が沸いた。

今目の前の状況よりもそちらの方に好奇心を持ってしまったオリビアが爪先立ちになって覗き込もうとして無防備になった時――


「きゃあ!!」


「リヴィ!」


ウェルシュに髪を引っ張られて引き寄せられたオリビアが悲鳴を上げる。

オリビアよりもジェラールを守らなければと一瞬の判断を誤ったルーサーは、歯噛みしながら腰に下げていた剣を抜いた。
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