冷たいアナタの愛し方
背中にルーサーの気配をびしびし感じる。

しかも自分の腰に腕が回っているし、頻繁に剣を握っているであろう大きな手は…とても男らしかった。

無駄にときめいてしまったオリビアは、ものすごい速さで走るシルバーから振り落とされないように前のめりになって顔を伏せていた。


「オリビア、さっきリヴィを出そうとしたでしょ。わかってたからね」


「え…どうしてわかったの!?」


「巨人に剣を投げた後、何か呟いてたのを見たよ。遠かったから定かじゃなかったけど…やっぱりそうだったんだね」


「ひどいわ、かまをかけたのね」


馬ではなく、巨大な犬のような狼のような獣に乗って坂道を駆け上がっているオリビアとルーサーに驚いた住人たちが道を避けてくれると、さらに調子に乗ったシルバーのスピードが上がる。

これはきっと帰り着いたらお説教を食らうのだろう、とぼんやり考えつつも、あのことだけは忘れていなかった。


「…ウェルシュがお父様たちを殺したと言ってたわ。自分の手を汚さず…命令で…」


「…うん、そう言ってたね。残念な結果になってしまったけど…これからどうするの?」


ルーサーに問われたオリビアは、ルーサーを見止めた門番が慌てて開聞する中スピードを落とさず突っ込んで行くと、庭の手前でようやくシルバーを止めた。


…殺してやりたい。

両親を殺したウェルシュを。

養女にしてくれた恩返しをひとつもしていないのに、殺されてしまった両親を…養父たちの仇を。


「殺してやりたいわ…。永世中立国の王を殺したのよ?各国が黙っていると思う?この事実を公表すべきだわ」


「うん、僕もそう思うよ。ウェルシュは法で裁いた方がいい。その綺麗な手を酒樽の汚れた血で染めちゃ駄目だ」


オリビアが黙ってしまったのでルーサーが後ろから顔を覗き込もうとしたが…やめた。

頬を伝う涙に気が付いたから。


「……怖い目に遭ったね。さあ戻ろう。戻って食事をしてお風呂に入ってゆっくりして…それから考えよう」


「………うん…」


優しいルーサー。

今はその優しさが胸に沁みて…涙が止まらなくなった。
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