冷たいアナタの愛し方
ルーサーが作ってくれたスープはとても美味しくて、そしていつもは毒舌のジェラールは…気を遣ってくれているのか、黙って目の前でスープを飲んでいた。

しとしとと降っている雨の音とシルバーの呼吸の音だけが聞こえる静寂の世界で、オリビアは両親の冥福を祈る。

…もちろんこのままにするつもりはない。


あの酒樽に…

両親たちを殺して、そしてさらに自分を闘技場内に落としたあの男に一矢報いらなければこのやりきれない思いは昇華しないだろう。


「いけないことを考えてるね。リヴィ…とりあえず今日はもう横になってゆっくり寝た方がいいよ。僕も離宮に戻るから」


「ありがとうルーサー。明日…ウェルシュを糾弾するでしょ?裁いてくれるのよね?私も行っていい?」


「もちろん。明日迎えに来るからそれまでは何も考えずに本でも読んで過ごしたらいいよ。じゃあね、おやすみ」


もう少し傍に居てほしかったのだが…ルーサーにもやるべきことが沢山あるのだろう。

聞き分けのいい子でいないと嫌われてしまうかもしれないのがいやで、素直に頷いたオリビアはルーサーを見送ってドアを閉める。

そして、ジェラールとふたりきりに。


「…今日は私に毒を吐かないのね」


「…お前こそ。大丈夫なのか。本当に怪我はないのか?」


「無いって言ってるでしょ。それよりシルバーが巨人に思いきり締め上げられたの。シルバー…ごめんね、ありがと」


「くふっ、わんわん!」


「…そうだな、主でもない女を身を挺してよく守った。えらいぞ」


昔よく遊んでくれたジェラールにも誉められたシルバーが尻尾をふりふりして喜ぶと、ジェラールは顔を舐めてくるシルバーの背中を撫でてやりながら、静かに怒りを漲らせているオリビアを横目で盗み見る。


「ローレンの王を殺されて怒っているのか?やけに王たちに固執しているようだが、両親の心配はしないのか」


「え?……えっと…私の両親は…王宮に居たはずなの。王たちが殺されたのなら、一緒に居たはずだわ。だから…」


「そうか。それ以上言わなくていい。…つらい目に遭わせたな。ウェルシュの命だったとはいえ、我が国の責任だ」


珍しく殊勝なことを言ってオリビアの目を丸くさせたジェラールが2階へと上がっていく。

オリビアは力なくベッドに身体を投げ出して、すぐさま隣にやって来たシルバーのお腹を枕にして目を閉じた。


「お父様…お母様…お兄様たち…」


今夜は、眠れそうにない。
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