冷たいアナタの愛し方
しとしとと雨が降り注ぐ中、オリビアはずっと天井を見つめていた。


どんな出生の出かわからない自分をお姫様のようにして育ててくれた両親。

幼くして亡くしたと言われている本当のお姫様の代わりに、大切に育ててくれた両親が――死んでしまったのだ。


恐らく…確実に、自分のせいで。


「リヴィ……私のせいで…お父様やお母様たちは…」


『あなたは覇王となる者。私があなたの身に宿った時点で決まっていたことよ』


「え…?」


身に宿る剣が覇王剣という伝説の剣であること――ジェラールの離宮で暮らし始めてからルーサーに教えられた。

国同士の均衡を瓦解させてしまうほどの威力を持つという覇王剣…リヴィを狙ってウェルシュが出征したということは、自分のために両親たちが殺されたということ。


「私の…せいで…」


『仇を討ちましょうよ。私が助けてあげるわ、オリビア。さあ…身体の力を抜いて……」


身体の底からふわふわと温かい温風のようなものに包まれたオリビアの目がとろんとなる。

競り上がってくる高揚感と、ウェルシュを呪う自身の声。


殺さなければ…あいつを殺さなければと何度も強く願っているうちに――オリビアの意識は身体の奥底へと沈んでゆく。


そしてオリビアの身体を乗っ取ったリヴィがゆらりと起き上がると、シルバーが小さく唸り声を上げた。

今目の前に居るのがオリビアではないと気付いていた。


「しー、静かにして…。私はオリビアの願いを叶えてあげるだけよ。お前は目立つからここに。いいわね?」


「……くぅん」


耳をぴったり倒して伏せをしながら上目遣いにリヴィを見たシルバーはその命令に従うしかなく、尻尾を垂れる。


「オリビアはあの男の死を願った。私が叶えてあげるべき願いよ」


オリビアでは到底できないであろう妖艶な笑みを浮かべたリヴィは、足音もなくドアを開けて外に出て空を見上げる。


1歩外に踏み出すと、脚は宙に浮き、雨はリヴィを包んでいる淡い光に弾かれて濡れることはなかった。


「私が、叶えてあげる」


全てを。
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