冷たいアナタの愛し方
翌朝早朝――慌ただしくドアが開いて、慌ただしく2階へと上がって行く何者かの足音が聞こえた。

目を擦りながらベッドから身体を起こしたオリビアは、すでに起きていたシルバーに手を舐められてふかふかの身体に抱き着く。


「なに…?どうしたの……?」


状況がわからずぼうっとしていると、2階からネクタイも満足に締めていないジェラールと、きっちりネクタイを締めたルーサーが駆け下りてきた。

そしてぼんやりしているオリビアを見て2人共ドアの前で立ちどまる。


「な、なに…?何かあったの?私にも教えて」


「リヴィ……ウェルシュが何者かに暗殺されたんだ。僕たちは原因を掴みに行くからじっとしていて」


「え…!?ウェルシュが…殺された…!?」


驚愕に目を見開くオリビアの反応で、最初はまさかオリビアの犯行なのではと少し疑ってしまっていた2人はそれを反省して首を振る。

ここから城までの間に足音はなく、また濡れた形跡もない。

昨晩は雨が降っていたので必ず痕跡は残っているはずなのに――ウェルシュは執務室で血の海の中に倒れていたのだ。

剣の刺し傷が致命傷だったが、一体誰が…


「とにかく、暗殺者が野放しでうろついているのはまずいんだ。だからリヴィ…」


「私も行くわ。ここでじっとしていた方が怖いもの。お願い、連れて行って」


今すぐネグリジェを脱ぎ捨てようとしていたオリビアに背中を向けたジェラールとルーサーは、ひそひそと互いの見解を話し合う。


「…リヴィじゃないみたいだな」


「剣は背中を貫いていた。リヴィの腕力じゃ無理だ。まさか君を推す一派なんじゃ…」


「あいつは法で裁く予定だったんだ。もしそうなら勝手な真似を…」


「用意できたわ!シルバー、行きましょ」


「わん!」


メイド服を着るのはいやだったが、与えられた服はこれとあちこち糸がほつれたローブしかない。

ジェラールの趣味はどうしても理解できなかったが、シルバーと共に先に外へ出たオリビアは、目標を失ってしばらくの間太陽の下で立ち尽くしていた。


「お父様たちの仇が討てなくなったわ…。一体誰が……」


「……きゅぅん…」


君だけど、教えない。


シルバーはオリビアの身体に顔を擦りつけてひっそり呟いた。
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