冷たいアナタの愛し方
「陛下なんて絶対呼ばないわ。それに私…もう目的を果たしたからローレンに戻らないと」


ジェラールとルーサーの脚が止まった。

ルーサーはオリビアの事情を全て知っていたが、ジェラールは断片的にしか知らない。

両親を殺したかもしれないオリビアがウェルシュに復讐をするためにここまでやってきた程度のことしか知らず、それにオリビアがやけにローレンの王たちのことについてウェルシュを問い詰めたがっていたか、その理由も知らない。


「…戻るのか?」


「ええ。それに私がローレンに戻ったら……あなたが捜しているオリビアを私も捜してみるわ」


「……ルーサー、お前はそれでいいのか?」


急に話を振って来たジェラールの深意を理解しているルーサーは、肩を竦めてシルバーの頭を撫でる。

どう説明すればいいのか…今目の前に立っているのがオリビアですと行った方がいいのか量り兼ねて黙っていると、オリビアはルーサーにちらっと目をやって俯く。


引き止めてほしい、と心のどこかで思っていた。

少しでも自分がここから去ることを寂しがってほしい、と思っていた。


だがそれは口に出せず、きゅうんと鼻を鳴らすシルバーに笑いかけて耳の後ろをかいてやる。

とても名残惜しくて仕方ないが…王亡き今ローレンはどうやって再び立ち上がったらいいのだろうか。

養女の自分にできることは?

城勤めで生き残っている人たちはどの位居るのだろうか?


やるべきことは、山のようにあるはず。


「お父様たちを弔わなきゃ。ジェラール…ローレンを属国にしないわよね?あなたが王になったらローレンを…ローレンを解放してくれるわよね?」


「…あれはウェルシュの独断だ。覇王剣を持つ者など存在するはずがない。あれは本の中の伝説だ」


「……そうよね。でもそのせいで…ローレンは襲われたわ。覇王剣なんて……」


胸元をぎゅっと握りしめたオリビアは、考え事をしながらふらふらとスロープの方へと歩いて行く。

シルバーはオリビアの後を追ってちらっと2人に視線を遣ると、そのままオリビアについて行った。


「…戻るのか?本気で?」


「引き止めるなら今だよ。…で、君はオリビアとリヴィ、どっちにするの?」


答えが出せないままのジェラールは、銀の髪をがりがりかき上げてオリビアの後を追った。
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