冷たいアナタの愛し方
「おい、ちょっと待て」


追って来たジェラールから声をかけられたが、オリビアの脚は止まらなかった。

両親も兄たちも殺されて、ローレンは今国民を引っ張ってゆくリーダーが不在の状態だろう。

今は一刻も早くローレンに戻って、生き残っている人たちを捜して、国を立て直さなければ。


自分のせいで攻めて来られたのだから、自分がどうにかしなければ。


「おい」


「きゃっ!?……何よ。私準備があるから止めないで」


「………せめて出発は明日にしろ。俺とルーサーが途中まで送って行く」


「ひとりで平気よ。あなたは継承式があるんでしょ?忙しいだろうから私のことは構わなくても大丈夫」


気丈に言ったそばから声が震えて、シルバーが何度も何度も顔を覗き込んでくる。

いつも傍に居てくれる相棒にひらりと跨ったオリビアは、ふかふかの毛並みを撫でながらジェラールに小さく笑いかけた。


「シルバーを連れて行ってもいいでしょ?オリビアが生きてるならあなたの傍よりも私が捜したほうがきっと早く見つかるわよ」


「……オリビアの件は二の次だ。…今のお前を放っておくわけにはいかない。さっさと俺の離宮に戻って掃除でもしていろ」


相変わらずの高圧的な態度でそう吐き捨てるとウェルシュが倒れている政務室に戻って行くジェラールの背中を見つめながら、オリビアは彼が気遣ってくれたことにすぐ気が付いた。


冷たいのか優しいのか…相変らずよくわからない。

だが道中魔物が出るのは確かだし、シルバーの脚で逃げ切れるかもしれないが…相棒を危険な目に遭わせるのは忍びない。


「シルバー、先に戻ってましょ。明日になったらローレンに戻って…お父様たちを見つけてお墓を作ってあげようね」


「…ゎん」


小さく返事をしたシルバーは、庭に出ると空を見上げて何かを見つめていた。
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