冷たいアナタの愛し方
女奴隷たちは皆、自身の顔にも身体にも自信があったのだが――オリビアが全てを脱ぐと、思わずぽうっとなって見惚れてしまった。


オリビアはそんな周囲の視線にも気付かず、レティに手渡されたタオルで前だけを隠してお湯を被り、大きな浴槽に浸かって息をついた。

レティはオリビアの綺麗な身体をなるべく皆に見られないようにしながら壁際に押しやると、ひそりと注意を促す。


「ウェルシュは気に入った奴隷の部屋に押しかけて離宮に連れ去ります。オリビア様…部屋には必ず鍵をかけて下さい。あなたは綺麗だから絶対気に入られてしまう」


「フードを深く被るから大丈夫よ。心配してくれてありがとう」


煤を洗い流して素顔になったオリビアは汚れていた時よりも数段美しく、ただ髪の色が違うのでレティがちらちら見ていると、オリビアはひと房髪を摘んで馬の尻尾のように振って見せた。


「蛮族の巣へ行った時に染められたの。この方が目立たなくていいでしょ?」


「蛮族…!?オリビア様…大丈夫なんですか?」


「何が?ガゼルはいやな男だったけど親切にしてくれたわ。ここで会うこともあるかもしれないわね」


長風呂が苦手なオリビアはすぐ浴槽から上がって身体を拭くと、下着と粗末なワンピース、そしてローブを着てフードをすっぽり被った。


「急な呼び出しがあることもありますが、基本的にこれで仕事は終了です。オリビア様、私の部屋は隣ですから何かあればいつでも言って下さい」


親切なレティの手をきゅっと握って感謝の意を示したオリビアは、部屋に戻って言われた通り鍵を閉めると、ベッドに寝転んで瞳を閉じる。


――ここは敵地で、目標はウェルシュから両親がどうなったかを聞き出すこと。

急いては得たい結果など得ることはできないだろうと長期戦の構えでいくことにしたオリビアは、ランプの灯りを消して薄っぺらい毛布を被って寝た。
< 70 / 187 >

この作品をシェア

pagetop