冷たいアナタの愛し方
「今、会食の間にウェルシュが来ているはずなんだ。今日は観察するだけで、話しかけたりしないようにね」


背後で頷いたオリビアを確認したルーサーは、1度離宮に戻るからと言って別れると、オリビアはレティと共に地下に戻って食事の準備を手伝うことにした。


…だが…


「ちょっと!ベーコンが焦げてるじゃないの!何してるのよ!」


「ご、ごめんなさい」


フライパンでベーコンを焼く係を任されていたオリビアだったが、ベーコンはかりかり…いや、黒焦げになってしまい、慌てたレティは怒る女奴隷の間に割って入ると、馬房でのオリビアの健闘を話す。


「この子料理を作るのに向いてないのよ。でもルーサー様直々に給仕係に任命されたんだから我慢して。この子には馬房の世話も兼任してもらうから」


「え?!あの暴れ馬たちの?絶対みんな怪我するのに…リヴィは平気だったの!?」


「そうなのよ、根性あるでしょ?ほらリヴィ、カートに綺麗に並べてちょうだい。行くわよ」


レティに先導されて大人しくスロープを上がって会食の間に着いたオリビアは――席についているルーサーと、まん丸に太った赤ら顔の男が視界に入ると思わず脚を止めてしまった。


「…ぜんっぜん似てないわね」


ナイフとフォークを忙しなく動かし、ゆっくり食べているルーサーとは何もかもが対称的なウェルシュ。

似ているのは金の髪と青い瞳だけで、豚が服を着て食事をしている想像をしてしまったオリビアはなんとか笑みを噛み締めながら俯いていた。


「ジェラールがまだ戻って来ていませんが…兄上…本当にジェラールには会っていないんですね?」


「何度も同じことを聞くな。どうせ道草でも食って女遊びしてるんだろ。俺が即位するまでに帰って来ればいいけどな」


がははと下品な笑い声を上げたウェルシュは唾を飛ばしまくり、ルーサーは半分以上料理を残してナイフとフォークを置いた。


「即位…ですか」


「長男の俺が父の跡を継ぐのは当然だろうが。俺が国王になればガレリアはますます発展していくだろう。がはははは!」


オリビアは心の底からがっかりして、ガレリアがみるみる没落していく様が容易に想像できて唇を引き結んだ。


ルーサーが継げばいいのに。


そう思いながら額を押さえて俯いているルーサーをじっと見つめていた。
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