「同じ空の下で…」
「瞬~、あと何件?」
「あ~、あと6件だっけ、艶香?」
「あと6件」
「そ。だって。」
瞬とタケルの会話を全く気にせず、およそ150件分の資料を私は無表情でホチキス止めを始めた。
「…なんか、機嫌悪くないですかぁ?」
「全然、機嫌悪くないし。」
瞬の顔を見ず、私は淡々とその作業を繰り返す。
その地味な作業をこなすと、パソコンで打ち込み作業をするタケルの横に資料を置いた。
「・・・・今日は、帰るね。」
「うん、今日も助かった。ありがとな。」
最初に出会った時から変わらない柔らかい笑顔で、タケルは私に微笑む。
「…今頃…眠気が襲ってきて…」
その言葉とほぼ同時に、大きなあくびが出てしまう。
「…ゆっくり休んで。」
「うん。最後まで手伝えなくてごめん。」
私は帰り支度をした。
「あれ、もう帰るの?」
事務所の隅の方で資料の封筒詰めをする瞬が、私を見た。
「うん、眠い。」
そう、誰かさんのおかげで、今日は心も体もフル稼働だったから…。
「…駅まで送る。」
「…いいよ、そこで作業進めてて?」
そんな事を素直に聞き入れる瞬じゃないことは、充分承知の上だ。
「お疲れ様~」
「お先に~」
そういうと、その部屋を出た。