「同じ空の下で…」

ロビーに響き渡るあの笑い声が何故か聞き覚えがある理由───。



『亮太さんの彼女さんですかぁ~?キャハハハ』



あの声の主は紛れもなくあの受付嬢の声だった。

社員と楽しげに会話を交わす受付嬢。

暫く静観して、また窓の外に目線を移す。


亮太の・・・新しいお気に入りかぁ。
あの電話の主はてっきり、どっかのキャバ嬢かな・・・なんて思ってたけど。

私と社内恋愛をしながらにして、社内の女子社員に手を出すなどという、まるで万年発情期のような行動を取る大胆不敵な亮太と言う男。

失望した。

亮太との数年間を後悔した。

私は彼の何を見て来たのだろう…─────。



さっさと関係を断って良かった。

肩を落として、ロビーの床を見つめていると、本田部長代理がやっと私を見つけ、声を掛けてくれた。



「つやちゃん!」


「ほ、本田さん!お久しぶりです!」



かつて、海外企画部でお世話になっていた本田部長代理。

海外企画部での功績が認められたのか、若くして見事な出世コースを歩く社内でも有名なデキる男だった。
年の頃もおそらく40代前半だろうか。

海外企画部に在籍していた頃から、英語力が半端なく長けていて、団塊世代の部課長クラスが、彼に一目置いていた事は新人の私にも目に見えて分かった。


「つやちゃん。すっかり秘書課の貫録が出てるね。」

「そんなでもないですよ。制服だけですって。」

「部下の成長って嬉しいもんだよ。俺も鼻が高い♪」

そんな会話を交わしながら、私達は社用車に向かった。
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