「同じ空の下で…」

「か、かしこまりました…。…伝えます…ね?」

「あ、かしこまらなくていいですよ。」

そういうとイケメンは、邪魔そうに長い脚をゆっくりと優雅に組み直した。

会話が途切れ、また、コーヒーに口をつける。

視線を感じゆっくりと顔を上げイケメンに目を移すと、バッチリ目が合ってしまった。


「あ、…す、すいません、お仕事のお邪魔になってしまったようで…そろそろ失礼します。」

コーヒーカップを慌てて置くと、私は立ち上がった。

いつまで、この人はここに居るんだろう…とか、思っているに違いない。

「邪魔なんかじゃないですよ。また是非いらしてください♪」

品のある笑顔で微笑まれてしまい、私もすかさず、作り笑いをする。

「それじゃ、失礼します…。あ…ご馳走様でした。」


慌てるように、そして逃げるようにその部屋を出た。


本田さんが言った通りのイケメン専務は想像を超える人だった。

空気さえ、自分の住んでる世界の空気とは違ったような気持ちになった。

呼吸すら、まともに出来ず、どこか息苦しさを感じた。

見合い写真なんか大事に持ち歩いてここまで来た私を今頃、なんて間抜けなヤツだと思っている事だろう。

弾んで居た息をやっと普通に戻しながら、エレベーターへと乗り込んだ。

ロビーに戻り、社用車に乗り込み、車を出してもらった。

ふと、ポケットに入れていたスマホがブルブルと震える。


[From:岡崎 瞬]

[Sub:無題]

[本文:今日は何時に終われそう?]









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