「同じ空の下で…」

「…なんだ、嘘なのね?」

『むしろ、本気にされた事に酷く気分が沈む…。密売人が己の身元を安易に明かすかよ…』


「…ごめん。」


『俺は、家業の手伝いしてるだけだ。』


「えっ?じゃ、瞬の家って何かやってるんだ?」


『…まぁ、それなりにね。』


結構一緒に居たのに全く瞬の事を知らなかった自分。

とてつもなく、瞬に申し訳ないような気持ちになってしまう…。


「なんか…今まで何も知らなくて…ごめんね。」

『艶香が謝る事じゃない。俺も別に聞かれなきゃ話さないし。でも、ちょっと嬉しいな。艶香、やっと俺に興味持ってくれるようになったんだなって♪…よし、この嬉しい気持ちのまま、俺は寝るとする!』


そう言われ慌てて時計を見ると、既に23時を過ぎていた。

「あれ、なんか随分長電話しちゃってたんだね…。ごめん、疲れてるのに…」

『いいよ、俺が電話したくてしただけだし。ゆっくり休めよ?ほんとに風邪ひくぞ?』

「…うん、瞬もゆっくり休んでね。…忙しいのに、電話ありがと。」

『じゃ、おやすみ、艶香』

「おやすみ、瞬」


電話の向こうから無機質な音が聞こえると、静かに電話を置いた。


瞬に無性に会いたくなる気持ちは、私も一緒だ。

殊に冬の雰囲気というか、季節柄もあるのかもしれない。


そんなに日にちが経っていないというのに、瞬の温もりが恋しい…。






< 126 / 646 >

この作品をシェア

pagetop