「同じ空の下で…」
「…なんだ、嘘なのね?」
『むしろ、本気にされた事に酷く気分が沈む…。密売人が己の身元を安易に明かすかよ…』
「…ごめん。」
『俺は、家業の手伝いしてるだけだ。』
「えっ?じゃ、瞬の家って何かやってるんだ?」
『…まぁ、それなりにね。』
結構一緒に居たのに全く瞬の事を知らなかった自分。
とてつもなく、瞬に申し訳ないような気持ちになってしまう…。
「なんか…今まで何も知らなくて…ごめんね。」
『艶香が謝る事じゃない。俺も別に聞かれなきゃ話さないし。でも、ちょっと嬉しいな。艶香、やっと俺に興味持ってくれるようになったんだなって♪…よし、この嬉しい気持ちのまま、俺は寝るとする!』
そう言われ慌てて時計を見ると、既に23時を過ぎていた。
「あれ、なんか随分長電話しちゃってたんだね…。ごめん、疲れてるのに…」
『いいよ、俺が電話したくてしただけだし。ゆっくり休めよ?ほんとに風邪ひくぞ?』
「…うん、瞬もゆっくり休んでね。…忙しいのに、電話ありがと。」
『じゃ、おやすみ、艶香』
「おやすみ、瞬」
電話の向こうから無機質な音が聞こえると、静かに電話を置いた。
瞬に無性に会いたくなる気持ちは、私も一緒だ。
殊に冬の雰囲気というか、季節柄もあるのかもしれない。
そんなに日にちが経っていないというのに、瞬の温もりが恋しい…。