「同じ空の下で…」
瞬に出会ってから、随分貪欲な自分が其処に居る。
人の肌が恋しくなるなんて気持ちは今まで感じた事が無かった。
亮太に抱かれて眠って居た頃だって、一緒に暮らしていたら当たり前の儀式、それは、必ず行わなければいけないような義務的な事のように感じて、彼の腕に包まって亮太の体温を確かめるように手探りで触れたくなるような感情など、自分の中に湧き起こる事なんてなかった。
インターフォンを鳴らされて、玄関に駆け寄る。
モニターで顔を確認すると、ためらいもなく開錠する。
この人の癖は…そう、右側の口角だけを上げて、悪戯っぽく片目を細めて柔らかく微笑むんだ。
出張から帰宅して、私のアパートに来た瞬の顔を見た途端どうしようも無い位に彼に触れたくなる衝動を抑えきれず、玄関のドアが閉まると瞬を無言で抱きしめた。
靴を脱ぐ暇もなく、大きな荷物をその場に置くと、それに応えるように大きく私を包み込んでくれる…瞬。
「…ただいま。」
私の頭に顔を埋める…瞬。
長い事会っていなかったかのような…
懐かしさに溢れる瞬の匂い。
「おかえりなさい。」
「会いたかったよ、艶香」
大好きな…低音で鼻にかかったその声に、私は安心する。
私がずっと欲しかった瞬の温もりを…確かめる。