「同じ空の下で…」
電車の中───…

こんな事は断ろう、由美には申し訳ないけど。

そんな事を考えていた。

『りょうたさんの、かのじょさんですかぁ~?』

・・・・未だ耳に残る、あの声。

なのに、私が悪者なの?

ちょっと友達と飲んでたくらいで、悪者なの?

何で亮太に怒られなきゃいけないの?



アパートのドアを開けると同時に、

私は亮太の右手の平を、左頬に受けた。

左頬を抑えながら、亮太を睨みつける。

「なんだよ、その顔」

「亮太のケータイ、今日の会合の取引先さんが持ってるんじゃないの?」

「なんでだよ?馬鹿じゃねーの?」

鼻で笑うようにして亮太は私から目を逸らした。

私は、自分の携帯を取り出すと、着信履歴をみせた。


「わかんない?この意味?」


亮太の顔が一気に強張る。


「・・・・意味わかんねぇよ」


亮太は私から離れると、ソファーに座った。


玄関先で

私は震える。



頬に亮太の平手を受けるのは

今に始まったことじゃない。

『亮太は自分に従う女、艶香を自分の思い通りにしたいだけ』

『亮太は自分の感情を処理してくれる女、艶香を人形のように扱いたいだけ』

『亮太は何も言わない艶香を飼いならしたいだけ』

2年間、私はよく頑張った。





「亮太、私を自由にしてください」






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