「同じ空の下で…」


「本当なの?瞬。嘘だよね?またいつもの…」


『艶香からかうのおもしれー!』



そうだよね、また私をからかってるんだよね?





「ごめん、これは…本当だよ。」



瞬の腕に更に力がこもる。

どこか、震えてる瞬の声で、これが冗談話じゃないって事が分かってしまう。

瞬の鼓動が早くなって居るのも、この腕の中に抱きとめられている事で解ってしまう。

瞬の鼓動が私の頬に伝わる。





何を急にこの人は言い出すんだ…。

瞬はいつもそうだ。

何だって急なんだ。

勝手に物事決めて結論だけ話して…



それより、そんな事を今頃言うなんて、ズルいよ瞬。

私に今まで与えてくれた思いは…、それを知って居ての事だったのだろうか。

そう思うと、私はただ、瞬に弄ばれた女の一人に過ぎないのかもしれない。

自分勝手に一人盛り上がって有頂天になっていただけだったのかもしれない。

こんな形で、目の前の温もりを失う事になるなんて予想もつかなかった。


顔を上げられず、私は瞬の胸の中で静かに目を閉じる。




「そっか…。じゃ、もう…2人で会うのはやめようね…。」


いい女ぶって、私も理解ある女を演じてみる。


「俺さ…完全に艶香に…ハマってる。」




それは、私も同じだよ。

そう言いたいのに、なかなか上手く声が出せない。

軽くショックを受け、声の出し方を忘れてしまったかのようだった。








< 132 / 646 >

この作品をシェア

pagetop