「同じ空の下で…」
俺は重い足取りで空港に降り立つ。
行き交う、大きなスーツケースを携える人々を見ながら、ふと頭をよぎる。
『このまま逃げてしまいたい』
そう、兄貴みたいに…行方をくらましてしまいたい。
タクシーに乗りこみ宿泊先に向かい、チェックインを済ます。
一面に拡がる銀世界。
スマホを取り出すと、その景色を艶香に送った。
ジェームスと会う時間は15時だった。
それまで適当に時間を潰し、なるべく決断すべきその事を考えないようにした。
待ち合わせ場所に向かうと、青い瞳を期待で一杯にした目で俺を待つジェームスがそこに居た。
「よく来てくれました、瞬。会いたかったです。」
「おひさしぶりです、ジェームスさん。お会いできて光栄です」
本当は貴方に合わずして、そのまま逃げようと思ったけれど…。
「家族は元気ですか?」
「はい、皆元気です。俺の兄貴以外は。」
そう答えるとジェームスはクスッと笑った。
「お兄さんの事は本当に残念です。でも瞬、貴方のような人が居るという事は、お父さんにとってはかけがえのない財産でしょう。彼は、お兄さんが失踪してしまった時、酷く落胆していました…。」
「…俺は、兄貴の替わりにはなれませんよ。」