「同じ空の下で…」

「先日は…お世話になりました。」

「いえいえ、そんな、私は何も…。」


常務に頼まれたあの『企画書』(見合い写真)を渡した相手、イケメン専務の高梨さんが、庶民の集うコーヒーショップに居た。

「待ち合わせですか?」

「はい。」

「…彼氏?」

…そういわれると、酷く答えに困る。

少し考えると、一番無難で妥当な言葉で彼に返す。


「…いいえ、同級生と待ち合わせしてるんです。」


「そうですか。私は…打ち合わせの帰りです。」


「…こういう所、来るんですね。」


「どういう意味です?」


「セレブも、こんな所にいらっしゃるんだなぁって。」


だって、確か、この人はあの大きな会社の専務取締役で、俗に言う御曹司な筈である。


「セレブ?誰がそんな事言ったんです?私は普通の人間ですよ。」


あの時微笑んだように、彼は私に笑顔を向けた。


「…ご一緒しても、構わないですか?」

コーヒーをお互い受け取ると、高梨さんは私の顔を覗き込むように言う。

「…構わないですよ。」

思わずそう答えてしまい、空いてる席を見つけると向かい合わせにその席に座った。

相席を断る理由がそもそも、ないのだから。


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