「同じ空の下で…」

「…そんなもんですかねぇ…。」

「今、暇がないからそう思うだけなんじゃないでしょうか?」


遠くを見る様にして、高梨さんはそのまま外に目を移した。

コーヒーをまた一口飲むと、私も同じように窓の外を見る。

その時ふと、瞬の姿を見つける。

「…あ、やっと来た。」

「…ん?」

「…あ、あの、約束してた友達が来たので、失礼しますね。」


「あ、そうですか。付き合わせて申し訳なかったです。」


「いいえ、お話できて良かったです。」

自分のトレーを手にもち、バッグを腕にかけると、私は立ち上がった。

「英さん。」

「はい?」

「素直に彼が来たって言ったらいいじゃないですか。表情ですぐ分かってしまいました。」


「…そんなんじゃ、彼はそんなんじゃ…。し、失礼しますね…。」

「また、どこかで。」


会釈をして逃げるようにその場を後にすると、私は瞬の居る店外へ出た。

私は、やっぱり解りやすい性格なのかもしれない。

さっきの高梨さんの一言で顔が赤くなってしまったのが自分でも分かった。

彼じゃない、瞬は彼じゃない…。…じゃ、瞬は何?




「おお、艶香。…なに頬を赤らめてる?」


私の顔をのぞきこむ瞬の瞳にだって、嘘はつけない。


「ちょっと…知り合いに偶然あって。」

「えっ?どの人?」

「あの…窓際で一人でコーヒー飲んでる人。」


「ふーん…。ま、いいや。」


「…行こう。急がないと今日中に回れないかも。」


「そうだな、行こうか。」


瞬の車の助手席に勝手に乗り込み、車が走り出すのを無言で待った。

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