「同じ空の下で…」
「…なぁ。」
その顔に一瞬だけ釘づけになっていた私は、ハッとして気が付く。
「…ん?なに?」
「…自分を抑えるって…難しいな。」
瞬が目線を移さず、そのまま一点を見つめて呟いた。
"それなら、私の隣なんかに座らなきゃいい"
本心と裏腹な想いが私の脳裏を過る。
すぐそこにあるのに、触れてはいけない…。
いいや、いけない訳じゃないが、これ以上触れてはいけない、超えてはいけない境界線がある。
…ただそれだけの事。
私は何も言わず、隣に居る瞬に微笑みかけた。
それは、私も同じ気持ちだよ、瞬。
今、あなたに触れる事が出来る筈なのに…安易に触れてはいけない…。
私も、自分を抑えてる。
抱きしめれる距離なのに…触れない。
結局、行ったり来たりの…はっきりしない私たちの関係。
「…やっぱり俺、自分の本心に従おうかな…。」
タケルが、ビールジョッキを片手に、今日集まった皆への挨拶をしている。
全くその言葉が耳に入らず、私はただ、瞬のか細い声を聞きとる事に集中していた。
タケルの姿が乾杯のポーズに変化する…。
「分かった。お互い、それなりの覚悟をして…」
"互いの本心に従おう"
………その瞬間に私の中の瞬へのモヤモヤが吹っ飛んだ気がした。
「かんぱ~い!」
その声と同時に、私は瞬とグラスを突き合わせ、乾杯をした。
そう、それが、
私たち2人が出した『答え』だった。