「同じ空の下で…」
すると、つないだ手を、そのまま自分のアウターの右ポケットに入れて、冷めきった私の手を温めるようにしてくれる。
「瞬の手って…いつもあったかいね…。」
「艶香の手がいつも冷た過ぎるんだよ?」
「…いいんだ、温めてくれる人居るから…」
「よく言うよ、酔っ払い。」
「酔った時くらいいいじゃん。」
寒空の夜道をバカップル全開でゆっくり歩く。
「星、綺麗だなぁ…」
「うん、前に見た時みたい。」
冬の澄んだ空気の夜空は、星の瞬きが半端なく綺麗だった。
「俺の名前、爺ちゃんがつけてくれたんだけど…」
「うん。」
「産まれた日に満天の星空だったらしい。瞬く星のように輝き続ける人間であれ!…そういう意味があるんだそうだ。」
「ああ、それで、瞬。」
「艶香は?珍しい名前だよなぁ…」
「アタシは…。」
一瞬言葉に詰まる。
父の当時の愛人の源氏名…。
そんな事言っても、瞬は驚かないだろうか?
「ん?」
「…どんな由来があるかなんて知らないや…。聞いたこともないし。」
「ふぅん、そっか。じゃ、俺が誰かに『艶香』って名前にするならどんな由来にするだろう……。」
「…どんな由来があるの?」
「艶やかさに溢れる香り…そんな女に育ってほしい…とかかな?」
「…ふぅん。なるほどね♪じゃ、そう言う理由にしとこっか。」
もう一度瞬の肩に頭をもたげると、アウターの中で繋いだ瞬の手をギュっと握った。