「同じ空の下で…」
どんな最悪な事があっても繰り返し繰り返し朝は、また来る。

仕事に集中しているつもりでも、どこか上の空だった。

深くため息をついた時、机上の内線が鳴った。


「こちら1階フロア受付です。英さんのお席でしょうか?」

「はい。」

「1階にお客様がいらしておりますが」

「常務にでしょうか?」


受話器を片手に慌てて常務スケジュールを確認すると、今日は特に誰かと会う予定など入って居なかった。


「いいえ、英さんにお会いしたいとお客様はおっしゃってますが…」

「あたしに?」

「はい。ロビーでお待ち頂きますか?」

「…はい、じゃあ、そうして頂くよう、お願いします…」

家族かな?
そんな事を思いながら、席を外すことを隣の社長秘書の香織さんに告げロビーに向かった。

一体…誰かな?

丁度昼休みに差し掛かろうという時間だった。

ロビーに着くと、そこには、昨晩見た顔の安堂タケルが、作業服姿で待っていた。

「突然すいません。安堂です。」

「あ…あの、昨晩はすいませんでした。突然帰ってしまって…」

「いいえ、顔を出して頂いただけでも良かったですよ」

優しさが溢れる雰囲気を醸しだしながら安堂は柔らかに笑った。



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