「同じ空の下で…」
瞬が笑い転げる姿を思わず想像してしまう。
恋情に任せて、ただ単純に『好きだ、大切だ…』と彼の言葉に溺れ盲目になっていた。
「…大丈夫だよ、瞬の事信じてれば。…と俺は思うけど?」
「…冗談にも程があるわ。どうしてそんな大切な事を先に言わないのかなぁ。」
「でも、艶香も知ろうとしなかっただろう?」
「…ま、そうだけど…。」
「おあいこだよ、瞬も艶香も。」
そんな事を話してると同級生たちが一人、二人とじわじわと増えていった。
「…二人とも、俺にとっては大事な友人だ。そのうち3人で飲もうな?」
「…嫌だよ。どうせ2人で私を虐めるつもりでしょう?」
「…いいじゃん、そういうのも♪」
「いくない。私は理由をつけて参加しないからね。」
「いや、君らは常に強制参加ね。さて、仕事仕事っ♪」
そう言って上手い具合にタケルが仕事に取り掛かり始めた。
私はというと…
瞬の言葉や温もりに幸福を抱き、彼の中身までを知らずに居た事に、少し反省をしていた。
だけど、ヘッドハンティングされたという瞬は、やっぱり自分の想像もつかない凄い人なんだなぁとちょっと尊敬の念を覚えたりもした。
一人、物思いにふけながら自分で淹れたココアに口づけると、元気で大好きな声が事務所に響いた。
「お疲れ~♪お!艶香、今日は早いなぁ♪」
いつもと変わらずの笑顔の瞬を見て私は右手を軽く上げて、無言でまた残ったココアを啜った。