「同じ空の下で…」

「あの時は感情的になっていてごめん」

ちゃんと向き合って座ると、最初に口火をきったのは亮太だった。

「許してくれるよね、艶香なら…」

いつも通りの口調で軽くいう亮太。

私は、無言で首を横に振った。

「俺…、無理なんだ。なんか自分でもよくわかんなくて…抑えられなくなるんだ…。」

亮太の言葉を聞き入れ、静かに息を吸い込むと、呟くような声で私は言った。

「私は、もう…なんか…疲れちゃったよ…」

亮太の顔を捉えると、びっくりしたような顔で、私に問う亮太。

「俺に?」

また、無言でこっくりと、首を縦にして頷く。

「どうせ…私を力づくで何とかしようって考えるんでしょ?」

すると、亮太は何処を見てるか分からないようなうつろな瞳で…視線を落とすと、その薄い唇を静かに結んだ。

「…。」

「何回…おんなじ事、繰り返すの?」

「・・・・俺、艶香の事は本気だから、一緒に住んでんだぞ?」

「多分…亮太は、私じゃない方がいいんだよ。」

「なんでだよ?本当は、来月にでも、親に挨拶に…」

「は?」

「それが、そうゆうちゃんとした所が、今まで俺には無かったから…だから、そう言う事を言うんだろう…?ちゃんと将来の事は…考えてたんだ…」

自分の意に反する答えを聞かされ、すかさずさえぎるように、声のトーンを少しだけあげ、反論した。


「違うよ。」



…そう、こんな風なすれ違いも、上手くいってない一つの原因だと思う。
…とことん、私と亮太は価値観も見てる物も…全てが合致しない。


「はっきり言っていいかな?」

亮太の目をしっかり見て、少しだけ声量をあげて言う。

「うん。」

頷く亮太を確認して、また息を少し吸い込み、一気に亮太へ言った。


「愛想がつきました。特に、あの夜、亮太の電話から女の人から電話があったって事実…。あれで心が決まったんだ。」


「おまえだって、男が電話に出たじゃないかよ?」


私と同様、少しずつ声色がかわり、感情的になっていく様子の亮太。
…亮太がまた、手を上げそうな気がした。


それは、私の呼び方が[つやか]から[おまえ]になる時…。


「私、お金を貯めたらここをいつか出ようと思ってた。亮太は、私が何も言わなければ何度だって、他に女の人を作るじゃない。とっかえひっかえ…」




「俺は、艶香にバレないようにコソコソコソコソ…そうゆう事してたのは事実だ。でも、それが…バレないようにする事、そしてあからさまに見せない事が、つやかへの優しさのつもりだったんだけど…違うか?」


さっきまでの感情的な言葉とは裏腹に、妙に冷静に話す亮太に、気持ち悪さを感じる。

そして…


その台詞をきいた瞬間に私の中で、何かが切れた。




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