「同じ空の下で…」
艶やかで、甘い空間に静けさが戻ってくる。
さっきまでの吐息と熱い息づかいの余韻を残しながら、部屋の色が静かに平穏になっていく緩やかな時間…────。
また一つ、氷が溶ける音がすると、チャポンと水に溶け込むような音が同時に聞こえてくる。
瞬にしがみつくように、生まれたままの姿で、快楽の後の余韻に浸っていた。
私の首の下に腕を廻し、器用に私の髪の毛を撫でながらずっと私のおでこにかかる髪の毛をもう片方の手で静かに掻き上げている、瞬。
何も言わずに、愛おしそうな瞳で私を見つめる。
すっかり目尻が下がっていて…何だかそこに居る瞬は、いつも私をからかう瞬とは別人のような気さえしてくる。
「…少し、お互いの話でもしようか。」
「…うん。いいよ。」
そのままの体勢で、私は小さい頃からの話をした。
幼稚園の頃からの記憶。
小学校に入ってからの自分の事。
そして、両親が離別した…中学の頃の話。
自分の名前の由来。それを知ってからの、私の…中学時代。
2年上の先輩とよく夜に遊びに出る様になり、ある日私は先輩の家に外泊した。いわゆる、無断外泊だ。
今まで一度もそんな事が無かった私を、母は大袈裟な位に騒ぎ立て、翌朝、何食わぬ顔をして家に戻った私は、母からのビンタを頬に受けた。
「…貴方には失望した…。」
「…勝手に、期待しなきゃよかったじゃないっ!」
その光景は、大人になった今でも鮮やかに蘇って来るほど、衝撃的な出来事だった。