「同じ空の下で…」

目尻を下げながら、口角をあげて微笑む瞬は

「……いけない娘だねぇ…。」

と、笑った。

「…その後、担任と学年主任と生徒指導が家に来て、本当に大変だった…。不良認定を受けた気分だったな…。」

「…そりゃ、そうだろう…。」


瞬の武勇伝は、前にタケルと由美からそれとなく聞いた気がする。

瞬の話を聞きながら、私は勝手に学ラン姿の瞬を想像して一人で微笑んだ。

部活中に、部員とふざけ合い、度が過ぎて体育館の壁に大きな穴を開け先生に怒られた事。

夜の校庭で、夏休みに花火大会を遥人や嘉斗を中心に、十数人で花火をして、騒ぎ過ぎて近所の人に通報されたのか、先生がきて、翌日、全員一日中、学校の掃除をさせられた事…等々…。

そして、小さい頃の話を始める瞬の顔は、中学時代を語る楽しそうな瞬の表情とは対照的で、どこか寂しさを感じさせた。

「…俺には姉貴の上に10歳上の兄貴が居るんだけど…小さい頃に遊んだ記憶が全くないんだ。」


そこから話す瞬の話にただただ驚かせられた。


「…兄貴は、今、この空の下で、何を思ってるんだろうな…」


失踪したお兄さんの話をする時の瞬の瞳は、どこか儚げで曖昧なありきたりの言葉を掛けれるような雰囲気じゃなかった。



何と言葉をかけたら良いのか・・・・

ただ、いい加減な事は言えなかった。


私は黙ってその話を聞き入れるのが精一杯だった。
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