「同じ空の下で…」
「…兄貴が居たら、俺は…外国に行かずに済んだのにな…。」
そんな事を聞くと、急に現実に引き戻された気がして、たまらずに瞬を強く抱きしめずには居られなくなる。
生まれたままの姿で瞬にしがみつくと、瞬は強い力で私を抱き返す。
「…ちゃんと俺は艶香の所に戻って来るから。」
今、互いに目の前のその存在を愛しみあったとしても、今から刻む時間の先行きなんて分からない。
その計り知れない不安の処理方法を私はまだ身に着けて居なかった。
だから、涙が溢れて止まらなくなってしまうのだろう。
また、氷が溶ける音が響き渡る。
時計に目を移せば、既に深夜の1時を回っていた。
瞬がベッド脇のスイッチで部屋の照明を落とすと、私は目を閉じて、瞬の手を探り、そこに指を絡めた。
この体温。
この感触。
この香り。
離れている間、忘れる事がないように…────。
私の中に刻み込むように、瞬の存在を感じながら…眠った。
眠りにつくまで、瞬はもう片方の手でずっと私の頭を撫でていた。