「同じ空の下で…」

ホテルの窓から眼前に拡がる景色に目を細める。

厚い雲に覆われている曇り空と、目の前の人工的に造られた景色が奏でるグレー色のコントラストを何も考えずに、たばこをふかしながら眺める。


瞬に出会うまでの私の目に映る景色は、いつだってこの景色のように、色が無く…モノクロだった。

会社へのいつもの路。

通勤電車の色、人々、雑踏の音。

亮太との時間…───。


色がなかった。

単調な毎日は、色彩の欠片も見当たらなかった。



瞬の存在に気づき始めた頃から、又は彼と同じ時を過ごす時間は

いつだって色彩があって、自身の心の中ですら、虹色に満ちたり、ピンク色に染まったり、時には青一色だったりする。


「…もう起きてるのか?」


眠そうに目を開けながらベッドでブランケットに包まる瞬は、ココア色に染まるぼさぼさの頭を掻き毟りながら、窓辺でソファに腰かけている私を見る。


「…今日は、パッとしない空模様だよ。」


空中にゆっくりと漂う煙草の煙の行方を追いながら、瞬に言葉を投げかける。


「…艶香、雨おんなだろう…?」

「…瞬こそ。」

「あ…艶香、こっちに来て?」

いきなり目を大きく開眼させた瞬は、思い出したように私に手招きをした。


不思議に思いながら、急いで煙草を消すと、瞬の横に腰かけた。


「なに?」







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