「同じ空の下で…」
「ハッピーバースデー艶香。君の生まれたこの日に俺は感謝する。」
私は目を丸くした。
そして、充電していたスマホで慌てて日にちを確認すると紛れもなく、見覚えのある数字が画面に現れている。
一瞬にしてカァッーーーと、顔が熱くなる。
4月の第3週目の日曜日。
間違いなく今日は私の誕生日だった。
「…ありがとうございます。すっかり…忘れてた…」
少し(かなり)照れながら、私は瞬に丁寧にお辞儀した。
「…起こして?」
私を見上げ甘えてみせる瞬は、私に向かって手を差し出した。
その仕草がとても可愛くて、女性なら誰しも持って生まれた『母性』というヤツを上手に擽るような仕草だった。
仕方なく、その手を掴み、瞬を起こそうと少し力を込めて引っ張ると、反対に私がベッドの中に引きずりこまれる格好になった。
至近距離で見つめ合い、否応なしに彼のおもちゃになるかのように…唇を奪われる。
「一番最初に言えて良かった。」
「…その相手が…瞬で良かった…。」
────・・・・
「…てかさぁ、このホテルは絶対、瞬が事前に予約したよね?」
チェックアウトを済ませ、どこに向かうのか分からない瞬の助手席で、作られ過ぎた昨晩からの事を思い出す。
こんな豪華で人気の高そうなホテルが、土日に行き当たりばったりで空いてるはずがない。
昨夜、部屋から見える夜景を見て、そう思った。