「同じ空の下で…」


・・・・き ま ず す ぎ る・・・・。



一つ一つの言動にいちいち思考を巡らせなければいけない事に苦痛を感じた。



「…俺、来月、結婚するんだ。」

「…あ、そう。おめでとう。」

「…子供出来てね。」

「…へ~…。」


へぇ…、そう。

お幸せそうで何よりです。


「祝福してくれんの?」

「…ああ、おめでとう」

「…おまえは?」

「・・・・さぁ。未定。」


そう答えた時に、やっと自分の目指す階にその箱が到着する。

目の前のドアが開くと重苦しい空気から逃げ出すように足早にその箱の中から出た。

振り返り、箱の中を見ると、元彼の亮太は、軽く手を上げていて、私は苦笑しながら手を小さく上げた。

そして静かにドアが閉まっていく。


元彼の結婚…────…。


誰と婚姻関係になるのか知らないけれど…、私にはもう関係のない話だし亮太がこの先どう生きようと興味もないし、深読みもしたくないし。


無感情、無表情で『どうぞお幸せに』…そう思うだけのどうでもいい日常の出来事に過ぎなかった。

そして結婚という言葉に彼が縛られるような行動をとるとも思えないし、どうせ自分の生きたいように生きていくんだろう…上手に隙をみては、軽い女遊びを続けていくんだろう…もう、亮太についてはそんな風にしか思えない自分が居た。




「おはようございます。」


いつもの光景、いつもの仕事、いつもの…私。

周りの人間が、どう変わろうが、いつもの日常は何食わぬ顔してやってくる…それが現実ってやつだ。

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