「同じ空の下で…」

「こんな時間にどうしたの?」

目の前の艶香は、パイル地のハーフパンツと同じ生地のパーカーを羽織り可愛らしいおでこにかかる前髪を、無造作にアップしていた。

笑顔まじりで俺を驚いた顔で見る。

両端の口角がキュッと上がっているその口許から覗く八重歯がやたら可愛らしい。

自然に俺の顔も綻んでしまう。

「一緒にコレ、食べようと思って。」

「電話くらいしてくれても…。」

「わりぃ、充電が切れそうだったんで。」

「そっか。…まず、入りなよ、散らかってるけど。ごめんね。」


そう言って部屋に入るように促してくれる艶香からは、風呂上りなのか、ほのかに石鹸の香りが漂っていた。


「全然散らかってねぇし♪」


艶香の部屋はいつだって片付いている。

ライムグリーンのカーテン、淡い黄色のベッドカバー、真っ赤なソファ、白くて猫足の丸テーブル、俺よりも少しだけ小さめな、液晶テレビ。

さっきまでパソコンで何かしていたのか、艶香はノートパソコンの操作を始めた。

「…いいよ、続けたら?」

「…だ、大丈夫。今、閉じるね…。」

狼狽えるように、慌ててパソコンを閉じ始めた。

「ごめんね、ちょっと動画見ながら…ヨガっぽいことしてたの。」
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