「同じ空の下で…」
部屋の中にほのかに甘く優しい香りが控え目に漂い始めると、マグカップにそれを入れ、やっとの事で艶香は俺の向かい側に来た。
「ほんとゴメン、こんな時間に…。」
「ううん、いいよ。それより、電話、充電したら?」
「サンキュ♪」
素直にそれに従い、充電器のコードを差し込んだ。
「・・・・15%・・・・。ありえねぇ数字だ…。」
「充電する間もなく、一体こんな時間迄何をしてたの?」
「出資してくれたスポンサーに、お礼廻りしてた。」
「えっ!?」
「その企業先で、これ、貰ってきたんだ。」
「…てか、イベント終わってホッとしてたけど…そんな後処理もあったんだ?!」
「…まぁ、あるっちゃあ、ある。俺が今日行った所は親父と爺ちゃんのコネ関係。」
「…誰も何も言わないから、全然知らなかった…。ごめん、気付かなくて。」
「お前が謝る事じゃないし。…それより、早く食お?」
「あ、そだね、ゴメン。」
艶香の口癖なんだろうな…。
ごめんごめんて…俺はお前をいつ責めたんだろう…と思ってしまう。
艶香からスプーンを受け取り、そのままプリンをすくい上げて口の中に拡がるほろ苦いカラメルと脳内が溶けて行くようなプリンの甘さ…───。
「トレビアーン♪」
艶香は、無防備にとろけるような表情を俺に見せた。