「同じ空の下で…」
「あれは美味しかったね♪…て、あんまり味を覚えてないけど。艶香にとっては、美味しく感じたんだね、きっと。」
由美はえくぼを見せながら私に含み笑いして見せる。
「今日は…何美味しいの食べれるんだろ?楽しみだねっ!」
「情報誌に掲載された所って里奈から聞いたから…それなりに期待しちゃっても大丈夫そうな気がするんだ~♪あー…お腹空いてきたっ。」
春の暖かさとは思えないような、ちょっと暑さを感じる夕暮れ。
街全体が橙色に染まり始めていく。
「里奈…遅いね。」
「うん。」
時計を見てふと顔を上げれば…橙色のグラデーションが視界に飛び込んできた。
ビル街が茜色に染まる様と、沈みゆく太陽がビルに反射して眩しく光る光景に見とれていた私は、由美の話にカラ返事を返していた。
水色だった空も静かに橙色に染まっていく。
「…綺麗だなぁ…。」
「…ん?」
「夕暮れ。」
「ああ、そうだね。綺麗…。」
西の空に静かに白く、飛行機雲が伸びていった。
「ごめ~ん!」
黄昏ていた私たちの目の前に、やっとの事で里奈が現れる。
里奈は息を切らし、呼吸を整えるように肩で息をしていた。
「お疲れ様~!」
「仕事、大変そうだね?」
「・・・・はぁっ、はぁっ…うん、まぁ、大丈夫。ほんっと、遅れてゴメン」
「大丈夫だよ。今、2人でたそがれてた♪」
「ちょっとアンニュイな感じになっちゃってたけど。」