「同じ空の下で…」
里奈はいきなり目を輝かせた。
「先日…てか結構前にそこに行って書類を届けに行ったんだ。書類って言っても…中身は・・・・」
見合い写真だったらしいけど。
「まじ?!いいなぁ。艶香。」
「なんで?」
「私達みたいな平社員は滅多にお目にかかれないのよねぇ。だから勝手に女子社員内でジンクス作ってんの。『高梨専務に会う事が出来た日は必ずいい事がある』ってね♪」
「…うちの会社の近くのコーヒーショップで会った事もあるんだけど…」
「えっ?!何で何で艶香ばっかり?…あたし今度、そこ行って待ち伏せてみよっっと。」
…しかも、会話までした…なんて事まで話したら、この勢いだと里奈に張り倒されそうな気がして、私は口を閉じた。
そこまで言ってしまえば、私はただの嫌味な女に過ぎない…。
「今度、そこでお茶でもしようよ、里奈。」
「うんうんっ!絶対にね!」
「里奈、その人の事、好きなの?」
「好きとかじゃないよぉ。憧れっていうか、デキる男の象徴なんだよね、我が社ではさぁ。所詮高嶺の花っていうか…目の保養ってヤツよ。」
「じゃあ、里奈は今、好きな人とかって…居ないの?」
由美はまた、ニヤニヤと含み笑いをする。
里奈は狼狽える様子も無く、あっさりと堂々と答えた。
「タケル♪」
私と由美は目を丸くして顔を見合わせると、思わず笑ってしまった。
タケルには勿論の事、里奈にも悪いと思いながらも…、笑わずには居られなかった。
里奈だけが一人、キョトンとしている。
「変?」
「ううん、変じゃないけど…」
「意外だった…。」