「同じ空の下で…」
「タケルはいいと思うよ。ああ見えて男気あるし、優しいし。」
由美は良く手入れの行き届いた、白く美しい手でシガーケースから煙草を一本取り出して火を点けると、大きな瞳で里奈を見つめ、にっこりと笑いかけた。
タケルに好意を寄せていた、イベントの係の女の子の顔を思い出す。
『タケル君、彼女いるのかなぁ。』
『居ないと思うけど…私も良く分からないから、本人に直接聞いたらどうだろう?』
衣裳の手伝いをしていた、同じ中学出身の女の子だった。
その後、その子がタケルとどうなったかなんて私も知らないけど(大体、その頃は自分自身と瞬の事で頭の中がいっぱいだったので)、今のタケルを見ても女性の影など見当たらないので、…きっと、タケルはまだ特定の女性なんて居ないような気がした。
「里奈、応援するよ。」
里奈の目を真っ直ぐに見ると、私は里奈に力強く言葉を掛けた。
「応援されるほど…あたしももう、子供じゃないよ。でも、何かあったらその時は宜しくお願いしますっ」
里奈は″恋する女子″の顔をした。