「同じ空の下で…」

いつもより少し高めのディナーを楽しみ、店を後にする。

「里奈、今日は満足っ!いいお店紹介してくれてありがとっ!」

「ボーノ!!」

「また来ようね~!」

興奮気味で会話をしながら、待ち合わせた西口へと戻る。

「じゃ、またね♪気を付けて!」

「うん!艶香も気を付けてね~!」




里奈と由美と別れ、彼女たちと反対方向へ向きを変えて歩き出した。

歩きながら、バッグからスマホを取り出し、画面でメールのチェックをする。


特に何もない。



ちょっとだけ…寂しさを感じながらまた、バッグにスマホを戻した。





待ち合わせた駅から2個目の駅に辿り着き、アパート迄の路を歩く。

等間隔に夜道を照らす街頭の下を歩いていると、何とも言えない香りが鼻先をかすめる。

道端には、白いティッシュのような花びらが、所々落ちていた。

すこし上を気にしながら歩いていると、ある家の庭にモクレンの木を見つけた。

香りの根源は、このモクレンの花だったのだろう。


そのまま、見上げていると、モクレンの花の背景には、煌めく星空が見えた。


歩を緩め、ゆっくりとその空を眺める。


『空に瞬く、星のように…』


瞬の事を思い出し、また寂しさを覚える。


瞬に、無性に会いたくなる…。


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