「同じ空の下で…」

そして、その週の週末は会社の課内での新人歓迎会が行われた。

配属になった初々しい新卒者達は希望と若さに満ち溢れていて、話していると、自分の新人だった頃を思い出し、初心に帰れた気がした。

そんな風に思えるようになった時点で私も歳を重ねたんだなぁ…と、ちょっとだけ気分が沈む。


「英さん、飲んでます?」

「飲んでますよ。」

瓶ビールを片手に席に廻ってくる、純朴そうな新人・西山君。

「グラス開けて下さいよ。」

少し背の高いグラスを右手に持つと、ほんの少し口づけた。


そこにすかさずビールを注ぐ、西山君。


「英さんが課内で一番若いんですか?」

「…ううん、多分、私よりも年下はいるんじゃないかな。例えば…人事の高橋君とか、吉田君とか…。」

「いいえ、女子社員の場合を聞いてるんですよ。」

「ああ、なら、多分、私かも。」

「宜しくお願いします。色々相談に乗らせて下さい。」

「…私が…分かる範囲であれば…。」

そう答えると、西山君は、よく甲子園球児が試合の後、白い歯を見せてにっこり笑って帽子を取ってお辞儀するような…

そんな笑顔で私に笑いかけて別の社員の席に行き、また、ビールを注いでいた。

「…新人君なのに、やたらと…変に落ち着いてるんだ…」

「艶香ちゃん、それ、日本語変だよ?」


隣の席に居た香織さんが私の呟きにツッコミを入れて来た。



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