「同じ空の下で…」
「…ありがとう。」
ソファの上で肩を落として座っている私を後ろから包み込むように抱きしめてくれる、瞬の体温。
私は目を閉じた。
瞬の唇の温度が私の冷たくなったうなじに優しく触れた。
「ごめんな。寂しい思いを…させる事になって。」
「いいの。だって…仕方ない事じゃない…。」
私は呟くように…そして拗ねた子供みたいに言った。
離れてしまう覚悟っていうのは、もうとっくの昔に出来てたはずなのに…。
そして、もうメソメソと泣かないって決めた筈だっていうのに。
こんな風に優しくされて、更には、謝られてしまうと、そこまで築いてきた覚悟とか強さは脆くも崩れ去りそうになって、涙腺が少しだけ油断しかけた。
「見送りになんか…行かないからね?」
少しだけ、瞬の顔を見る様にして、顔の角度をずらしながら強がりを言って見せる。
「来るな。そのまま艶香を連れ去りそうになるから。」
私の肩を抱いていたはずの瞬の手は、そのまま少しずつ下に緩やかに降りて行き、ウエストの辺りにつくと腕を回した。
「絶対…行かない!」
「絶対来るな!」
目の奥が涙で一杯になる。
どんなに目を閉じたとしても、もう防ぎきれない。
小さな決意はあっさりと決壊し、頬に一筋涙が伝う。
それと同時に瞬の唇と私の唇は溶け合うように重なり合う。