「同じ空の下で…」
これ以上、私の中に瞬と離れがたくなる印を刻んで欲しくないのに。
そう思う心とは裏腹に、瞬の身体を強く抱きしめた。
…ただの、強がりに過ぎない。
本当は、いつだって瞬の体温を感じたい。
いつだって、この優しさに溢れる愛撫を受けて居たい。
毎日毎日…愛されていたい。
この先ずっと。
その日から二週間と2日が経過した、日本時間午後4:18。
瞬は、アメリカ、ワシントン州・シアトルへと旅立った。
もちろん、見送りには行かなかった。
彼が日本で最後に残していったメッセージは、彼らしいと言えば彼らしくて、拍子抜けするほどの一言。
『行ってきま~す♪帰りは遅くなります。ご飯は先に食べてて下さい。じゃな♪』
15:38にそんな馬鹿みたいなメッセージが入っていた。
その日は朝から常務に携わって仕事する事が多くて、今日が恋人の旅立ちの日だって言う事にふける時間すら無く。
労働組合と会社側の会議(春闘)から始まり、各支社からの工場長やらのお世話も加わって、珍しく汗ばんで仕事をしていた。
ほんのちょっと出来た時間に見たそのメッセージを見て、顔が綻んでしまったと同時に、切なさを覚えてしまい、そっと会社の窓から空を見上げた。