「同じ空の下で…」

今頃、瞬は空を見上げてるのではなく、雲の上を飛んでいる事だろう。



会社の窓から見上げたその空に、飛行機が緩やかに模型の様に飛んでいた。

その飛行機に瞬が乗ってる訳ではないかもしれないが、私は小さく呟く。


「いってらっしゃい…瞬。気を付けてね…。」


下唇を軽く噛み、スマホを制服のポケットにしまい、応接間へと足早に向かった。





定時より1時間程遅れて帰路につき、部屋についた途端に、堰をきったように涙が溢れて止まらなかった。

声を出して…玄関にうずくまって泣いた。


部屋のキャビネットの上にさりげなく置いてある、瞬が置いて行ったバイクのヘルメットと、彼の洋服と…瞬が愛用していたジッポライター。
そして二人で撮った写真が、写真立て入って飾られている。


この気配が…いつでもこの部屋に戻って来そうな気配が、余計に私の涙腺を緩ませていた。



靴を脱ぐのも忘れて…しばらく自分の心のままに泣き続けた。



瞬…会いたい。





< 310 / 646 >

この作品をシェア

pagetop