「同じ空の下で…」

タケルってば…保護者みたいな事を言う。

なんていえばいいのか…お兄ちゃんみたいに(実際兄なんていないけど)言うタケルの気遣いに、張り詰めて強がっていた自分の中の瞬への想いとかが少しだけ緩んだ気がした。

心のままに従えばいい。

私と瞬の恋愛は、そういう恋愛の形だった筈だ。

何を強がって我慢していたんだろう…と、ちょっとだけ今までの自分が可笑しくなった。

「だけどさ…、タケル。」

「ん？」

「『ご飯に付き合って』って、素直に言えないんだ、実は。」

「ん？どういうこと？」

「…タケル、今、彼女居るの？」

そういえば、勝手に解釈していたけど、ちゃんと聞いたことがないような気がして、タケルに質問を投げかけてみる。

「…居ないけど？」

「そっか。」

「どういう事だよ？」

「タケルの事を好きって思ってる子が居るから…タケルの事を簡単にお誘い出来ない訳です。」

煙草を灰皿におくと、火をそのまま消した。

タケルは、ウザったそうにして、表情を崩した。

「…今、彼女とか好きな子とか…面倒なんだよな…。」

「…そうなんだ？」

「今は、その気ない感じ？…艶香は別。女友達だし、恋愛発展なんてありえない相手だし。…その子の存在で、俺は瞬との男の約束を果たせなくなる訳じゃん？面倒だよなぁ…。うん、実に面倒だ。」

「はっ？なにソレ。」

「…今は、完全に恋愛体質には向いてないです、俺は。気を遣わなくていい艶香や由美と居た方が楽。…その子にも言っておいてよ。」


「…い、…言える訳ないじゃないっ！自分で言ってよ！」

…こんなダークサイドなタケルを見たのは初めてかもしれない…。