「同じ空の下で…」
会社の前を通過する時に、瞬がここに現れた時の事を思い出す。ヘルメットにサングラスを掛けたスーツ姿の瞬。あの時は…ちょっと怖かったな…。

だけど、背中にしがみついて居た時の広い背中の感触とか、時々確認してくれるかのように、回した腕に自分の手をさりげなく触れてくれた時の手の温度や感触は、全然怖さを感じる事はなく、むしろ、懐かしいような暖かさを覚えるような…不思議な気持ちになった。


思えば、あの時から…完全に瞬のペースだったな。

恋愛感情を持つ前の、瞬はこの上なく強引で図々しくて身勝手な人間だった。

されど、どこか憎めない奴だった。


あの時に恋心ってヤツを覚えていたら、私の今は少しは変わったのだろうか。



公園内を歩き切ると、コーヒーショップに立ち寄った。

ここでも、瞬と待ち合わせたな…。

瞬が来る前に、あのセレブ高梨にも会って、少しだけ何か会話をした気がするが…その内容より、その後の瞬との会話なんかを覚えてるのは、やっぱり、興味があるか無いかの違いなのかもしれない。

セレブ高梨との会話で唯一覚えてる事は、彼は同級生だって事ぐらいかもしれない。


今日もきっと仕事に追われているんだろうな…。


フラペチーノを飲みながら、また外の景色に目をやる。


ひょっこりと…、あの時みたいに瞬の姿が出てきそうな程のごくありふれた日常。無意識に、ここに居る筈も無い瞬の面影を…探してしまう。
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